なんだかややこしい「なにやら」
こんにちは、辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「何やら」(なにやら)。
『三省堂国語辞典』で「なにやら」を引くと、よく似た言葉の「なんだか」との区別を知ることができます。
【区別】「何やら」はそれがあやしい、ふしぎだ、または気に入らない、という感じをともなうことが多い。「なんだか」は、特にその感じはない。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
たしかに「なんだかうれしい!」は使えても、「なにやらうれしい!」とは言いませんよね。
「何やら」にはマイナスイメージが付いており、「なんだか」とは明確な違いがあるのだということが分かります。

これにて一件落着……とはいかないようです。
念のため、『三省堂国語辞典』で「なんだか」を引いてみましょう。
きっと、「なにやら」とは明確に違う例文がのっているはずです。
うまくは言えないが。はっきりわからないが。例)なんだかとっても感動した。なんだかへんな者がきた。なんだか様子がおかしい。今さらあやまられても、なんだかなあ」
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)

あれ?なんだかよくわからないことになってきました。
「なにやら」の解説では「なんだか」には、それがあやしい、ふしぎだ、または気に入らない、という感じをともなうことは少ないと言っておきながら、例文の4分の3があやしい、ふしぎだ、気に入らないという感じをともなってしまっています。
ということは、「なにやら」と「なんだか」に違いなんてないのでしょうか?
『新明解国語辞典』の例文も見てみると、
●「なにやら」 ・・・ 彼の様子はなにやら変だ。なにやら怪しい音がする。
●「なんだか」 ・・・ なんだかのあたりが痛くて重苦しい。なんだかいやな予感がする。
このように、どちらも同じような意味で使われています。
『旺文社国語辞典』でも、ほぼ同じような内容となっています。
例文にあるような、日常で使う場合では、両者に違いはなく、使い分けを意識する必要はないのかもしれません。しかし、『三省堂国語辞典』のいうような区別を頭の片隅に置いておけば、使い分けに悩んだ時役にたちます。

「なにやら」と「なんだか」の区別を知っておけば、小説などで出てきたときに、より深い読解にもつながるかもしれませんね。