辞書によって異なる「白兵戦」
こんにちは、辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「白兵戦」(はくへいせん)。
辞書によって、異なる説明がされている、面白い日本語です。
まず、『新明解国語辞典』を見てみると、
至近距離の戦闘。両軍の人間が、直接斬り合い格闘をしたりピストル・自動小銃を撃ち合ったりする。
出典:『新明解国語辞典』(三省堂)
と、解説されています。
一方で、『三省堂国語辞典』では解釈が異なっており、
(銃撃戦でなく)刀などで切りあったり、格闘したりするような接近戦。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)

辞書係
なんと、新明解国語辞典の解説をバッサリと否定しています!
銃撃戦を白兵戦と考えてよいのかどうか。『新明解国語辞典』と『三省堂国語辞典』の意見は食い違っています。それでは、他の辞書はどう考えているのでしょうか?
結論から言うと、『旺文社国語辞典』は、『三省堂国語辞典』と似た考えでした。
『旺文社国語辞典』には他の辞書にはない、「白兵」(はくへい)の意味も載っています。
「白兵」とは、
①抜き身の刀。白刃。
②接近戦で敵を切り、または突きさす武器。刀や槍など。
とされており、「白兵戦」は「刀や銃剣などを持ち、敵味方入り乱れて戦う接近戦」と説明されています。
「白兵」がかなり古い武器を意味することからも、「白兵戦」は現代の戦闘にあてはめることが難しい言葉になってきました。刀や槍で大勢が入り乱れる戦いは百年以上前のもので、現代ではほぼ行われていません。
しかし、『新明解国語辞典』のように、武器にこだわらず、人同士の至近距離の戦闘を広く「白兵戦」と考えることで、「白兵戦」は死語とならず、生き残ることができます。

辞書係
これからも「白兵戦」が使われ続けるとしたら、『新明解国語辞典』の解釈が一般的になっていくのでしょう。