辞書の楽しさが分かる「カフェオレ」
こんにちは。辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「カフェオレ」。

突然ですが、もしもあなたが辞書に「カフェオレ」の説明を書くとしたら、どんな内容にしますか?
よくわたしもやってみるのですが、自分が辞書を作る立場になったとして、どのように言葉を説明するのか考えることは、とても楽しくて、とても難しいものです。
その一例であるカフェオレも、困ったことに、これまでなにを根拠に「これはカフェオレだ」と認識していたのかわからなくなりませんか?
ブラックコーヒーに牛乳を少し加えてみたところで、それはカフェオレではなく、ただのミルク入りコーヒーです。 しかし、牛乳にコーヒーを少し加えてみると、カフェオレと呼べそうな気もします……。
悩んだ挙句、わたしの案は、「コーヒーに牛乳をくわえ、味をまろやかにしたもの」となりました。コーヒーの状態だけでなく、味にも触れているのがポイントです。
こんな感じで、自分ならこういうふうに書こうかなと、考えながら辞書を読むのもとても楽しい遊びです。

ぜひ、自分なりのカフェオレ説明を考えてから、先をお読みください。
言葉のプロが考える「カフェオレ」
それでは、言葉のプロたちは「カフェオレ」をどう説明しているか見てみましょう。
コーヒーにほぼ同量の温めた牛乳を入れた飲み物。
出典:『新明解国語辞典』(三省堂)
コーヒーに牛乳をたっぷり加えたもの。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
ふたつの辞書を比べてみると、
『新明解国語辞典』は、かなりカフェオレを限定的なものとして記述しています。
「ほぼ同量の温めた牛乳を入れた」という記述には牛乳の量と温度という詳しい情報があり、かなり攻めの定義ですね。『新明解国語辞典』は、この例からも分かるように、一歩踏み込んだ解釈を提供する、とても素敵な辞書です。
一方で『三省堂国語辞典』は、カフェオレを広い意味で定義しています。
「たっぷりの牛乳」という、ふんわりぼやかした記述でカフェオレをイメージしやすくしてくれています。また、温度には言及していませんので、冷たい牛乳を入れても、ちゃんとカフェオレです。『三省堂国語辞典』は、読む人誰もがイメージしやすい解釈を提供してくれる、素晴らしい辞書です。
ふたつの辞書を比べただけでも、これだけ解釈に個性があります。この個性に出会うことこそ、辞書を引く甲斐があるというものです。

ぜひ他の辞書でも、カフェオレを引いてみてください。面白い発見があるはずです。