日本語は【犬】のイメージが悪すぎる
こんにちは。辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「犬」。
辞書を読んでいると、「犬」を使った熟語やことわざがよく出てきますが、
その言葉たちに共通しているのが、かわいそうなほど犬のイメージが悪いことです🐶
犬侍、犬死に、犬畜生、犬の遠吠え、etc…
「犬」がどれだけ可哀そうなことになっているか、まずは、いくつか例を挙げてみます。
〇犬侍 ………… 役に立たず、恥知らずの侍
〇犬死に ……… 犬が死ぬのと変わらない、結果として何の役にも立たない死に方。
〇犬畜生 ……… 犬や畜生同然のやつ。
〇犬の遠吠え … 臆病者が虚勢を張ることのたとえ。
(出典:『新明解国語辞典』)
ほかにも、犬も歩けば棒にあたる・犬も食わない・犬猿の仲 などがあります。

かわいそうなくらい、マイナスな言葉によく使われていますね。
猫のイメージ
犬と同じくらい人気の「猫」と比較してみましょう。
猫に関する言葉も、辞書にはたくさんあります。
〇猫も杓子も …… ごくありふれた一般の人びとがそのことにかかわる様子。
〇猫に鰹節 …… 大好物の意から、すぐに餌食や犠牲になりそうで危険千万なことのたとえ。
〇猫にまたたび …… 大好物。相手のごきげんをとるのにいちばん効果があることのたとえ。
〇猫可愛がり …… しかることなどを全くせず、もっぱら甘やかしてかわいがること。
(出典:『新明解国語辞典』)
猫に関する言葉はほかにもたくさんありますが、
犬と比較すると、猫はそれほどひどい扱いはされていないようです。

「猫可愛がり」があって、どうして「犬可愛がり」はないんだ!
と、怒る犬派の方がいてもおかしくありません。
どうして「犬」と「猫」でこのように違うのか、辞書にはその原因である、
「犬」がもつイメージについて明記されています。
「猫ちゃん」はいいけど、「犬ちゃん」とは呼べない
辞書で「犬」を引くと、面白い記述があります。
「犬」「猫」は二大ペットだが、「猫」は「猫ちゃん」と言えるのに対し、
「犬」は「わんちゃん」という。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
たしかに、近所を散歩している犬に、「可愛い犬ちゃんですね」なんて声をかけたら、
飼い主に「は?」って顔をされますよね。
どうして「犬ちゃん」とは呼ばないのか。
それは、そもそも犬という言葉には、「手先」・「スパイ」・「役に立たない」・「無駄」という印象(意味)があるせいだと、『三省堂国語辞典』は分析しています。
辞書を引けば犬にあたる
ここまで見てきたように、マイナスな意味を多く含む「犬」ですが、
辞書を引いていくと犬を使った表現が、圧倒的に多いことに気づきます。

それだけ、人にとって身近で、親しみやすい動物だったのでしょう。
ぜひ辞書で「犬」を引いてみて、いろいろな言葉を見つけてみてください。