辞書による違いがおもしろい
こんにちは。辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「重言」(じゅうげん)。
重言とは、「頭痛が痛い」など意味の重なった言葉を続ける言い方のことですが、辞書ごとに解説が違っていて面白い日本語です。
さっそく、引き比べてみましょう!!
同じ意味が含まれている言葉を、おもに口頭語で意味の重複に気づかず重ねて使う言い方。「じゅうごん」とも。例、「うしろへバックする・被害をこうむる・石を投石する」など。
出典:『新明解国語辞典』(三省堂)
意味のかさなったことばを続ける言い方。重ねことば。「馬から落馬する」などくどいものは避けられるが、ことばによって、くどく感じられる度合いはちがう。「歌を歌う」「大学に入学する」などは、あまり抵抗なく使われる。「だがしかし」のような強調や、「ラム酒=ラム」のような説明のための重言もある。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
同じような意味の語を重ねて使う言い方。「豌豆(えんどう)まめ」「落石が落ちてくる」など。重言(じゅうごん)。
出典:『旺文社国語辞典』(旺文社)
このように、3つの辞書で引いてみると、それぞれ個性的な例を採用していることが分かります。
なんとなく、重言は文法的に誤りで使ってはいけないような気がしますが、『三省堂国語辞典』のみが、抵抗なく使われる重言に言及しており、その例として、「歌を歌う」と「大学に入学する」と書かれています。

たしかに、日常のなかでも重言はたくさん出会いますね。「一番最初」のように、重言でも受け入れられている表現はあります。
また、各辞書の例から、重言の共通点が見えてきます。
それは、「石を投石する」「馬から落馬する」「落石が落ちてくる」など、熟語の中にすでに主語が含まれているパターンが多いことです。
他にも、「火を消火する」「電気を発電する」なども同じような種類の重言であると言えます。
さらに、『三省堂国語辞典』のみが解説している「説明のための重言」も日常に潜んでいる面白い表現です。
『三省堂国語辞典』では、ラム酒を例にしていますが、例えば「一味唐辛子」や「生ビール」なども説明のための重言であるといえないでしょうか。
普通、調味料の一味といえば「トウガラシ」が連想されます。お店で「一味ください」といえば、必ず粉末状のトウガラシが出てきますよね。また、居酒屋で「生ください」といえば、当然のように「生ビール」が運ばれてきます。
つまり、「一味=トウガラシ」「生=ビール」の関係が成り立っているなかで、あえて「一味唐辛子」「生ビール」と表現することは同じ意味の言葉を重ねて説明している、「説明のための重言」の例と言えそうです。

まだまだ「説明のための重言」はありそうですね!わたしもがんばって見つけていきます!