飼い殺しの意外な一面
こんにちは。辞書係です。
今回紹介する引きがいのある日本語は、
「飼い殺し」。
「殺す」なんて言ってるくらいなので、とても悪いイメージの言葉だと思いがちですが、辞書を引いてみると意外な意味を知ることができます。
今まで飼っていた動物を、老いぼれて役に立たなくなった後も見捨てずに飼っておくこと。(広義では、使用人についても言う。また転じて、経済的な意味でのめんどうは見るが、その人の才能を十分に発揮する機会を与えずに、一生を送らせる意にも用いられる)
出典:『新明解国語辞典』(三省堂)
『新明解国語辞典』では、「見捨てずに飼っておく」と記述していて、動物を最後まで面倒みるという、良い行いの一面もあると解釈できる内容となっています。
辞書によって異なる解釈
ところが、『三省堂国語辞典』で「飼い殺し」を引くと、別の解釈で書かれています。
役に立たなくなった家畜を、死ぬまでただ飼っておくこと。活躍の機会もあたえず、ただ置いておくこと。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
『三省堂国語辞典』では、動物ではなく家畜と表現しており、死ぬまでただ惰性で飼うという、完全にマイナスイメージな言葉となっています。

このように、辞書によって解釈が異なっている言葉がたくさんあります。
辞書によって解釈が異なるなら、なにを正解だとすればいいのか分からないですよね。
こういうときは、とにかくいろんな辞書で同じ言葉を引いてみるしかありません。
今回、第三の辞書として登場してもらうのが、小学館が発行している『日本国語大辞典』です。
『日本国語大辞典』は日本を代表する辞書であり、一つひとつがとんでもなく大きくて分厚いうえに、全部で13巻もあります。普通の書店ではなく、図書館にいけば出会えると思いますので、ぜひ一度実物を見てみてください。
そんな『日本国語大辞典』で「飼い殺し」を調べてみると、以下の通りでした。
出典:『日本国語大辞典』(小学館)
- 家畜、雇い人、老人などを、役にたたなくなっても死ぬまで養うこと。
- その人の力を発揮できるような仕事をさせずに雇っておくこと。
- (方言)死ぬ直前まで、うまい物を食べさせたりして親切にすること。岩手県気仙郡。
『日本国語大辞典』には、『新明解国語辞典』と同様に、「役にたたなくなっても死ぬまで養うこと」とあるように、プラスイメージの解釈が載っています。
「カシミア」の例でもあるように、この二つの辞書は共通する部分が多いかもしれませんね。
さらに、岩手県の方言にも、「飼い殺し」を100%良い意味の言葉として使う、という新情報まで知ることができます。

いろんな辞書で、同じ言葉を引いてみると面白い発見がありますよ。