『新明解国語辞典』の寝正月
あけましておめでとうございます。辞書係です。
今回ご紹介する引きがいのある日本語は、
「寝正月」。
話題がお正月の過ごし方となったとき、「いやぁ、わたしは寝正月だったよ」と答える人も少なくありません。何気なく日常で使う「寝正月」という言葉ですが、辞書で引き比べてみるとおもしろいことが分かります。
『三省堂国語辞典』と『旺文社国語辞典』は、ほぼ同じ内容で、
(ゆっくりねて/病気でねたまま)正月を過ごすこと。
出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)
正月に家でのんびり寝て過ごすこと。また、正月を病気で寝て過ごすこと。
出典:『旺文社国語辞典』(旺文社)
以上のように、病気も含めて正月を家で過ごすことを寝正月としています。
『新明解国語辞典』にも、だいたい同じようなことが書いてるのですが、すこしだけ「んっ?!」となる部分があります。
(ふだん忙しい人が)正月にどこにも出かけずに、ゆっくり毎日、家で過ごすこと。広義では、病気などで寝て過ごす意にも用いられる。
出典:『新明解国語辞典』(三省堂)
そうです、『新明解国語辞典』からすれば、誰でも彼でも「いやぁ、わたしは寝正月だったよ」と語ることは許されません。ちゃんと1年を忙しく過ごしてきた人にだけ、「いやぁ、わたしは寝正月だったよ」と語る権利が与えられるのです!
・・・と、冗談はさておき、このような他の辞書にはない一言を付け加えているのは、まさに『新明解国語辞典』らしい部分だと思います。無難な模範解答で済ますのではなく、少し引っかかるような解説になっても、言葉の本質をしっかりと伝えようとしてくれる。これだから『新明解国語辞典』を引くのはやめられません。

辞書係
いつもありがとうございます。今年もたくさん引かせていただきます。