手沢(しゅたく)

さ行

際立つ新明解国語辞典の表現

こんにちは。辞書係です。

今回紹介する引きがいのある日本語は、

「手沢」(しゅたく)。

手沢品とは、長年愛用された本や道具を意味する言葉ですが、『新明解国語辞典』で「手沢」を引くと、他の辞書では見られない語釈に出会うことができます。

『新明解国語辞典』を引く前に、『三省堂国語辞典』および『国語辞典』(旺文社)で手沢がどのように解説されているか見てみましょう。

長く使っているうちに、手のあぶらによって出たつや。手元の愛用品に言う。

出典:『三省堂国語辞典』(三省堂)

長く使ったために、手あかや汚れで出たつや。

出典:『国語辞典』(旺文社)

どちらも、手で触ることによって付いてしまう汚れについて書かれています。

それでは、『新明解国語辞典』はどう表現しているのでしょうか。

辞書係
辞書係

新明解国語辞典をお持ちの方は、ぜひ実際に引いてみてくださいね。

その人が使っている間に、持ち物に時代がついてつやが出てくること。

出典:『新明解国語辞典』(三省堂)

『新明解国語辞典』では、手のあぶらや汚れと言った表現は避け「時代」という表現を語釈に使っています。無難に、他の辞書と同じ表現にしても良いところを、あえて変えているのはきっと大切な意図があるはずです。

消費社会の現代で、ひとつのものを長年使い続ける機会は減りましたが、それでもひとつくらいは、長年愛用しているものや、持ち続けているものがある人も多いでしょう。

そんな大切にされてきた愛用品たちは、汚れや手の油でつやが出ていくのではなく、「時代」と例えられた使用者の思いや使用感、思い出などによってつやめいていると表現しているのだとしたら、ものすごく素敵だと思いませんか?

辞書係
辞書係

新明解国語辞典のこだわりが詰まった、引きがいのある日本語でした。

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